ドーナツの穴

かたちはない でもそこにある

都がやってる江戸東京たてもの園

 

友人に「絶対に好きだと思うから行こう!」と言われ、小金井市にある江戸東京たてもの園へ行ってきた。

 

 

実を言うと、友人に教えてもらうまでここの存在を知らなかった。

江戸東京たてもの園は、小金井公園の一角にある野外博物館。江戸時代〜昭和中期までの貴重な歴史的建造物を移築・復元・保存しているのだとか。

 

この日は暑くも寒くもなくちょうど良い気候で、最高のピクニック日和だった。

土曜日だしきっと混んでるだろうと思っていたら、拍子抜けするくらい空いていた。単に敷地が広大だから過密にならないのもあるだろうけど、それにしても人が少ない。

おかげでひとつひとつじっくり快適に見て回ることができた。それでも全ての建造物を回り終えるまで3時間ほどかかったので、隅々まで見るにはもっと時間に余裕を持ったほうがいいかもしれない。

 

それにしても江戸東京たてもの園、いくら都営だからといってこのボリュームで入園料がたったの400円とは驚異的だった。

「むしろもっと払わせてくれ!」と思わずにはいられないほど、素晴らしいものをたくさん見せてもらった。

 

ものすごい見応えだったので、ここからはダイジェストで写真を載せていくことにする。

先に言っておくと、わたしは古い建造物について詳しくないし、歴史の知識や見識さえもあやふやだ。その上偉そうに言えた話じゃないが、説明の書かれた案内板をろくに読まない。

今回も案内板を写真に撮って、家であとから読み返して「えー!ここってこういう場所だったのか。もっとちゃんと見ればよかった〜」となることが多かった。そんなゆる〜い感じで回ったので、ところどころ間違えていたりお門違いな解釈があるかもしれない。

どうかゆるっと読んでもらえたらありがたい。(長い保身と言い訳でした)

 

 

■ 江戸時代中期、穀物や野菜をつくっていた農民の家

 

 

江戸時代、世田谷区で暮らしていた農民の家。

茅葺き屋根に趣を感じる。中に入ると土間が思ったより広々としていて、農作業や料理がしやすそうだった。

中では囲炉裏を焚いていて、ボランティアの職員さんが囲炉裏の構造などお話を聞かせてくれた。

燻した香りが髪や服に割としっかりめにつくので、もしこれから行かれる方は丸洗いできる服を着ていくのを強くおすすめする。

 

■昭和12年、板橋区ときわ台にあった写真館

 

丸みを帯びた左右非対称のつくりが特徴的な写真館。

1階は居住スペース、2階は写真スタジオ。スタジオは壁一面大きな窓ガラスで、まろやかな自然光が全体に射し込んでいて素敵だった。

ときわ台は戦前「板橋区の田園調布」と呼ばれる高級住宅街だったらしい。どうりでモダンなデザインで洗練されているわけだ。

 

これは余談だけど、今回一緒に行ってくれた友人は不動産で働いていて、今の家を契約する時も彼女とこんなふうに内見に行ったなぁ〜とここの台所でふと記憶が蘇った。(写真右参照)

江戸東京たてもの園は、当時民家として使われていた建物の中に入れるので、間取りや家具の配置を見たりして、まるで物件の内見まわりのようだった。

1階の子供部屋には窓際の机に椅子が4つ並べられていた。4人兄弟だったのかな。

「こんな素敵な子供部屋だったら、わたしももっと幼少期に勉強を頑張れてたのになー!」なんて話を友人と交わしたけど、そうだったとしてもわたしはきっと絵しか描いてなかったんだろうな。

 

■三井財閥 三井家総領家11代目のお屋敷

 

この家は門をくぐった瞬間から、「うわっ!ここはとんでもない富豪の家だ!」とわかった。

玄関の脇にある鹿のブロンズ像、大きなシャンデリア、ふすまの一枚一枚に描かれた花や鳥の華美な絵。仏壇のためだけに作られた立派な一室には、大迫力の龍の天井画が描かれている。家の至るところから大富豪のオーラが伝わってくる。

と同時に、重厚感のある空気になんとも言い表し難い怖さを感じた。

当時の渦巻く権力とか、支配力みたいなものが浮かぶからなのか。何か胸にずどーんとくる重いものがあった。

この邸宅で、史実にも残らず人知れず流した女性の涙がどれだけあったんだろう。そんなことを薄ぼんやりと考えていた。

 

■大正時代、建築家 堀口捨己が設計した小出邸

 

思わず「カーサブルータスみがある!」と呟いてしまった和室。(カーサブルータスみとは)

エメラルドグリーンの壁がおしゃれですごく綺麗。

建築家の堀口さんは、当初この小出邸を設計した時に三角屋根の先端に瓦を乗せるつもりだった。しかし途中で計画を変更して乗せるのをやめたらしい。(理由は書かれてなかった)

その乗せるはずだった瓦は、なぜかずっと庭に放置されていたらしく、このたてもの園に移築される際に瓦も一緒に寄贈されたんだそうな。

「その瓦、どこにあるんだろうね〜」と話しながらふと窓の外に目をやると……普通にあった。(しかも結構でかくてワロタ)

お庭だからオブジェっぽく設置するとかじゃなくて、本当に普通〜に庭の端っこにちょこんと佇んでいて、シュールで可笑しくて、思わず笑ってしまった。

可愛らしくさえ感じた。

 

■ここに住みたいオブザイヤー 前川國男邸

 

今回、江戸東京たてもの園でみた全ての建物の中で断トツ・ぶっちぎり・文句なしに好きだったのがこの、前川國男邸!!

ここもまたカーサブルータスみを感じる(だから一体カーサブルータスみとは)

飛び抜けてモダンなデザイン、まるで軽井沢の別荘のよう。この邸宅に来るために何回でもたてもの園に訪れたいと思うくらい、本当に素敵な空間だった。

こんな家に住めたら、居心地が良すぎてどこも出かけたくなくなるだろうなー。

高い吹き抜けのリビング、ロフトに上がるゆるやかな階段と、素敵なデザインの手すり、骨董品が飾られたガラスの戸棚、タイル張りのキッチンや浴室、各部屋への動線。何もかもが素敵!

 

ここに来る前に、友人と「イサムノグチのakariって素敵だけど、ここ数年インスタとかおしゃれな部屋特集とかであまりに多く見かけすぎて逆に取り入れづらいよね」なんて話をしていた。

だけど前川國男邸に吊り下げられたakariを見て、もうそんな考えは一瞬にして吹っ飛んだ。素敵だ。素敵すぎる。不朽の名品は理屈じゃないんだ。

「インスタで見かけすぎて」なんて、狭くて浅い物差しで測り、わかったような顔で逆張りしていた自分が恥ずかしい。

良いものは良い。だからここまで長く多くの人に愛されて、色褪せないのだ。ああ本当に素敵だった。この空間に選ばれた何もかもが。

この前川國男邸のようにイサムノグチの照明が調和する家に住みたいと心から思った。

センス良すぎる。

 

 

続いて、まるでタイムスリップしたかのようなレトロな建物や当時の商店が立ち並ぶエリアへ。

 

■昭和の銭湯 子宝湯

 

ザ・昭和レトロな大衆銭湯。

この子宝湯は、足立区で昭和63年まで営業されていたんだそうな。

お湯の張られていない浴槽の中にも入れたんだけど、意外と深くて驚いた。

 

■「千と千尋の神隠し」カマ爺の仕事場のモデルになった文具店

「千と千尋の神隠し」のカマ爺の仕事場のモデルとなったといわれている文具店。

作中で描かれていた薬草が入ったずらりと並ぶ棚の引き出しには、実際は書道用品の在庫がしまわれていたらしい。

 

■「千と千尋の神隠し」ハクが飛び込んできた縁側

 

高橋是清邸。

この縁側も、「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルになったとかなっていないとか。言われてみれば、龍の姿のハクが飛び込んでくるシーンに出てきた縁側に似ているような…

 

さっきの三井邸じゃないけど、ここもなんか入った瞬間から妙に怖かったのが印象的だった。

玄関からシーンとした空気と薄暗さが不気味で「ここなんか怖いね!」と友人と話していた。

他の建造物はたくさん写真を撮ったのに、ここだけはなぜか写真を撮る気が起きず。結局撮ったのは、この千と千尋のシーンといわれてる縁側の一枚のみ。

ひととおり見終わってから案内板を読むと、あの二・二六事件の高橋是清邸だということを知り「ひょええー!」となったのでした。

案内板を見る前は、単に「廊下に敷き詰められた赤い絨毯が不気味さを助長していたのかもな…」と暢気に考えていたけど、暗殺現場と知ってしまったらね…

なんかこう、なんとも言えない空気が流れていた。

■昭和初期のアットコスメ(?)村上精華堂

昭和初期に台東区にあった化粧品専門店、村上精華堂。

ポマード、バニシングクリーム、コールドクリーム、椿油や香水など、化粧品が当時売られていたらしい。

ポマードって懐かしい。口裂け女に遭遇したら撃退できる言葉って言われてたやつだ。

 

言うなればここは昭和初期のアットコスメみたいな感じだったんだろうか。

きれいになりたい、身だしなみを整えたいという気持ちはいつの時代の人たちにも共通したものなんだな。

 

 

他にも見どころがたっくさん!

いやぁ本当に楽しかった。自然豊かで歩いてるだけで気持ちよかった。

これから行くって方は、ぜひお天気が良い日に行ってみてほしい。

 

何度でも言うけど、これだけの建造物を管理・維持するのに本当に入園料400円でいいんですか…?と真剣に思う。

 

職員のおじさんに「初めてここに来たんですけど、すっごい楽しいところですねー!」と伝えると、「いろんな人にいっぱいおすすめしてくださいね〜」と言われた。

なので微力ながら是非とも宣伝させてほしいと思う。

海外の人にもまだそんなに知られていないようで、外国人観光客の数もそんなに多くなかったし、間違いなく行って損なしの穴場です。江戸東京たてもの園。

ロバート秋山の「TOKAKUKA」って歌の中にも出てくる、江戸東京たてもの園。

「都、が、やってる!江戸東京たてもの園〜♪」が頭から離れなくなるので注意。

 

敷地内には、洋風建築を使用した雰囲気抜群のカフェもあった。この洋館はもともとは信濃町にあった西洋住宅デ・ラランデ邸を移築したものなのだとか。

お昼時でもわりと落ち着いていて、おだやかで優雅な時間を過ごせた。ホットケーキおいしかった。

 

日傘・雨傘の貸し出しもあり!

わたしみたいにまったくノー知識・下調べゼロで行っても十分楽しめる!

時間のタイミングが合えば専門家によるガイドツアーにも参加できる!

「参加希望の方は広場へお集まりください〜」と園内アナウンスが流れていた。わたしも次はそのガイドツアーを狙って行ってみようかな。

 

本当におすすめです、江戸東京たてもの園。

老若男女、誰でも楽しめると思う。

カラオケも行ったぜ!ぴ〜す✌️

「ここ絶対好きだよ!」と誘ってくれた友人にも感謝!ありがとう。

すっかり大好きな場所になりました。

また行こう、東京江戸たてもの園。