ドーナツの穴

かたちはない でもそこにある

月見バーガー欲

どこもかしこも月見商品で溢れかえっている。

ファストフードの季節限定シリーズのなかで、一年をとおして月見シーズンが一番好きだ。ケンタッキーの月見和風チキンカツバーガーなんて世界で一番おいしいと思ってる。今日だけでタイムラインでマックの月見バーガーの写真を載せてる人を3人見た。仕事終わりの友人からも「チーズ月見うまい!」と写真付きでLINEが送られてきた。

 

それに触発されてわたしもマックの月見バーガーが猛烈に食べたくなった。このとき、時刻はすでに21時。


どうする?ダッシュで駅前のマック行っちゃう?でももう夜遅いから出歩きたくないし、わざわざ月見バーガーのために駅前まで行くとか面倒くさい。そもそもこんな時間にマックってデブの極みすぎる。だめだめ!やめよう!…いやでもちょうど今キッチンペーパーを切らしてるな。そうだ洗剤もそろそろ切れそうだったよな。ドラッグストアに行くついでにマックも寄るのはありじゃないか?この時間のジャンクフードって最高だよな。今日朝におにぎりを食べたきりだし、カロリー的には全然許容範囲でしょ。いいじゃんどうせ今日は寝ないで夜中仕事するんだから。食べてすぐ寝ないんだから平気っしょ!

と、駅前に行く他の理由をわざわざ見つけてまで脳内でせめぎあった。

もう本当にあとちょっとのところで鍵を持ってパーカーを羽織って出掛けるところだったけど、冷蔵庫に傷みかけのナスと賞味期限が昨日までの納豆があったから、なんとか自炊を選択することができた。

 

 

えらい、えらすぎる。なんてえらいんだ。

言ってしまえばただの納豆ご飯なのだけど、とろろと卵黄をのせて申し訳程度に月見要素を入れることでこの月見バーガー欲をすこしでも抑えようと創意工夫が感じられる。
素晴らしいぞみつこ!と自分で自分を褒めまくった。

 

すっかりお腹も満たされて月見バーガー欲も落ち着いたところで、さっきまでマックに行くか否かで小一時間も本気で悩んでいた己のくだらなさに呆れるのであった。なんて生産性のない時間の使い方をしてるんだ…

でも、たかだか一度や二度この欲望を切り抜けたところでまるで意味がないのだ。わたしはそれを知っている。一度マックを食べたいという気持ちが芽生えてしまったらもう最後、逃げられないのだ。

 

前にも、マックのポテトが無性に食べたくて仕方ない夜があった。その時も我慢してわたしは心を無にして家でおかずを何品も作った。その時も「わたし我慢できてえらい!」と自分を褒めた。しかしそれでマックのポテトを食べたい欲が消滅することはなかった。むしろここから先の日々は「マックのポテトが食べたいけど我慢して家でごはんを作る」という状態がただひたすら続くだけなのだ。はっきり言って苦痛でしかない。この欲望は、マックのポテトを食べるまで尽きることがない呪いなんだ、とその時わたしは悟った。

 

だったらもういっそ、月見バーガーが食べたいと一度思ってしまったのなら無駄な抵抗はやめてさっさと食べてしまったほうがいい。どうせ食べて満足するまでこの呪いから解放されることはないのだから…ってことを、食器を洗いながらもんもんと考えていた。

 

たぶん明日もわたしは、SNSのタイムラインで月見バーガーを食べた人の投稿を見かけることになる。そのときお腹がすいてたら、間違いなく再び月見バーガーのことで頭がいっぱいになると思う。

でも明日は、今日作りすぎたフライパンいっぱいのナス味噌炒めの残りを消費しなくちゃいけない。またわたしは月見バーガー欲を抱えて生きなくてはならないんだ。

 

月見シーズンが終わる前に、早く食べに行かなくちゃ…

 


おまけ。

この間、母がうちに来た時に「これおいしいから食べてみ」と言って渡してきた利根川商店の味噌だれの素。(埼玉県東松山市のソウルフードらしい)

 

きゅうりにつけてもろきゅうみたいにポリポリ食べたらおいしかったから、今日はこれをみりんときび砂糖で伸ばして、ナス・しめじ・豚肉で炒め物を作ったらピリ辛でごはんがすすむ味になっておいしかった。焼き鳥とか茹で豚にも合うみたい。サンチュにくるんでもおいしそう。

 

うちの母はこういう全国ご当地調味料の類が好きで、ネットで調べて取り寄せてはよくうちに持ってくる。わたしもその類が好きなので、遺伝だなあと思う。